舘そらみのオトコミシュラン

2017年は、セブ島か東京に居ます。

【入院】6日目。同室の人たちが楽しませてくれる。

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よー寝た。夜中の点滴交換も、一瞬起きて、寝た。

 

一昨日くらいからステロイドの副作用で舌が肥大化してしまっていたらしく、

「舌とはどこにあるもんだったか」と首をひねっていたのが、ステロイドの投与が終わったら、舌のサイズも戻った。

そしたら舌の位置も思い出し、声も少し出だした。治ってきたわ。

「舌ってどこしまうんだっけ」「声ってどうやって出すんだっけ」そんなん、状態が好転すれば体が覚えてるんだ。

 

 

今日から、24時間のうち8時間しか点滴つかないらしい。一日4回、約2時間の点滴。ほぼ自由じゃん。いいねいいねー。

あー運動したくなってきた。面白い、全ての欲求が、健康に向かっている。

 

同室のおばさんたちも、確実に性格が好転した。

手術の前の日は「こんなくそばああ見たことない」って思うくらいクソババアだったのに、手術終えて2日、人のいいおばさんだ。

みんなみんなそう。結局は健康のドレイ。身体により性格なんて変わる。私も、やっと、人間だー!!

退院予定まで今日入れて3日、口が少しだけ開くようにもなった。やれることが急激に増えた。赤子のようだ。

 

もう今日は処置無いって聞いてたのに、「やっぱしといた方がいいな」ってまたちょっと傷口を広げられる。

ちくしょー騙された!ちくしょー!病院の手のひらで踊らされている。

でも、ムカつかない。

病院を好きになっている。ここを、愛し始めている。だってみんな、ステキなんだもの。

お医者さんも看護師さんも、ステキな人ばっかりや。

 

他の病棟に遊びに行く。迷い込んだ病棟が、重病患者ばかりだった。

うめき声や、不明瞭な声ばかりが聞こえる。…気分が滅入った(もう一喜一憂が凄い)。

そして館内放送で、「これから救急搬送でヘリが着く」の旨が流れた。…より気分が滅入った。今、死にそうな人間が居て、それを見守る人間が居て、この建物にヘリコプターに乗って近づいているかと思うと気分が滅入った。

ここに居ると、あまりにも死が身近で、しかも痛いことづくめによって、体がネガティブなものに反応しやすくなっているので、

少し想像するだけでどんどん妄想広がり、怖くなってしまう。怖いなあ。

コンビニに行き、珈琲を買った。特段飲みたくも無かったが、普通の生活のようなことをしようとした。珈琲は美味しくはなかった。今は、何も美味しくはない。

 

気分滅入っておうち(我が病棟)に戻ったら、窓に人だかりが出来ていた。

ドクターヘリが来るのを今か今かと待つ入院患者たち。あれがヘリポートか、いやいやあれか、と窓にへばりついている。チューブ付けた連中が。

「ほら、あんたも見なさい、ヘリコプター来るから!ね、若いんだから」同じ部屋のおばさんが、場所を開けてくれた。「若いんだから」とはどういうこっちゃ。若い人はヘリ見たいんかい。

なぜこんなにも入院患者の皆さんの興味をドクターヘリが刺激したのだろうか。

待てど暮らせどヘリは来なかった。どういうことかな、分かんないな。10分も待ったらみんな飽きて、「ちょっとあなた若いんだから見届けといて」って言われた。

別にヘリに興味ないんだけど、暫く窓見てた。来なかったけど。

 

「ちょっと調べてみて」を頼まれることがどんどん増えていく。

パソコン神話はすごい。

同室のおばさんたちの病名を調べて、要約させられた。

「ねえ、私の病気って結局何なの?」

ここは病院なのに。すぐそこに医者も大量の看護師も居るのに、私のウィキペディアの要約を聞く。面白いなー。

病名説明の次は、「私のこの糖高すぎない?ちょっと調べて」。いやいや、糖の平均値くらいは出てくるが、あなたの糖の数値がどうかは調べようがないのよ。

パソコンがあると、何でも分かると思われるらしい。

しまいには、おばさんの家の前を通るバス会社の名前を調べた。西東京バスだった。

住所を思い出せないってもんだから、近くにある建物の名前とか聞いて、地図で探しながら住所を突き止めた。結構な時間がかかった。「西東京バスです」という私の達成感とは裏腹に、その答えに興味は無さそうだった。なんやねん。

なんか、なんというか、ちょっと、良い時間、かもしれないなあ。

 

待って1時間、ヘリが来た。意外と音は静かだった。

私ともう一人、ヘリを待ち続けていた車いすのおじいさんが窓に張り付いて見ていた。「人の不幸を楽しんじゃいけないとは分かってるんだけどねえ」と独り言のように言っていた。

うーん、不幸ポイントがみんなをドクターヘリに惹かれさせたのか?よく分からない。

お部屋に戻ったら、おばさんが私の耳に手を添えてコショコショ伝えて来た。何かと思ったら「今、ちょっと便が出ました」という報告だった。

私に報告した後は、他のおばさんにも伝えていた。うん、報告…ありがとう。なんでや!

「うわ、良かったですね」と返して終わった。でも、私の後に報告を受けたおばさんは「何センチくらい?色は?」と話の花が咲き始めてた。そうかそうか、便の報告を受けたときの模範解答はそれか。負けた。

まだまだ、他人の便には興味が出ない。

 

んもう、一度心許したら急上昇、大部屋が女子高の教室みたいになってきた。

ご飯をのんびり食べてると、「ほら早く食べて、私持ってってあげるから!」と怒られ、下げてくれる。

この部屋には、世話焼きの学級委員長が居る。学級委員長は、「いいのいいの私暇なんだから」ととにかく部屋中のみんなの面倒を見てくれる。

ウゼー(笑)!楽しいな、この感じ。すんごいウザいけど!

「明日からも、私がちゃんと配膳しますから。ただ皆さん、あんまりのんびり食べないこと!」だそうです。あーウザい。あーいいね。

 

なんか、看護師さんと話し込んだ。君、仕事中に大丈夫かいってくらいに話し込んだ。

お互いの仕事の話とか。

「いいなあ、もっと刺激的な仕事がしたい。」

「看護師って実は、単なるルーティンワークですから」

そんなことを、聞いた。患者さんに(私もだ)聞こえる声でそれを言える強さよ。

気付いちゃった。やる気が無い看護師は、患者さんとたくさん話す。患者とたくさん話す時間で、勤務時間を埋めようとする。って気付いちゃったな!

 

人と、触れ合ってきた。

人間になったんだな、自分。

だから思う。病気療養中の人を、普通に見てはならんな、と。病気療養というだけで、想像以上に沢山のものが奪われている。

こんな屁みたいな入院でそうなんだ。大病を患いながら、人とコミュニケーションを取り続けている人の強さを思う。すごいもんだ。見上げたもんだ。

 

あー、看護師さんとのトークが楽しくて、酒が飲みたくなった。

声も出るようになってきて、大勢と話がしたくなった。宴がしたい。

元気になると、やりたいことも増えていく。

 

ああ、もう夜が来た。夜は憂鬱。寝れるかなー、ドキドキ。

これから9時間の就寝タイム。間に点滴交換の時間があるとはいえ、寝れちゃうんだからすごいよなあ。

今日は何時に消灯するのかな、有無を言わさず電気が消される、この寄宿舎みたいな生活悪くない。

「オラ、強くなりたいんだ!」と、仲間たちと12時間公道で立ち続けます。

色々お話したいことが溜まって来ているので、書くのも良いけど直接話す機会があったらいいのになあとか思っている。

【次回の公演】「他重人格」

【映画】

DVD発売中「私たちのハァハァ」

【WEBコラム】

「31にもなって約2週間仕事もせずにXを無心で追いかけてみる」

「初めましての恋バナ図鑑」

【劇評】

2月2日朝日新聞デジタル

【掲載】

週刊SPA!「いま、女たちが「都合のいい男」を欲しがるわけ」

LIG「言葉オタクなんです、私」

 

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